「53歳で会社を辞めたい。
でも、その後も働くなら退職する意味がないのでは」
早期退職を考えていると、そんな迷いが出てきます。
長年続けてきた週5日の会社員生活からは離れたい。
一方で、53歳からまったく収入がなくなり、
毎月資産を取り崩す生活にも不安があります。
私自身、目指しているのは
「二度と働かない完全リタイア」ではありません。
会社員時代と同じ働き方を続けるのではなく、
自分の時間を確保しながら、無理のない範囲で収入を得る。
そのようなサイドFIREに近い生活を考えています。
そこで今回は、53歳で退職し、
毎月の生活費を35万円とした場合、
月0円・5万円・10万円の収入によって
資産寿命がどのくらい変わるのかを比較します。
今回のシミュレーション条件
比較条件は次のとおりです。
| 項目 | 試算条件 |
|---|---|
| 退職年齢 | 53歳 |
| 取り崩し開始時の金融資産 | 5,000万円 |
| 毎月の生活費 | 35万円 |
| 年間生活費 | 420万円 |
| 公的年金の開始 | 65歳 |
| 65歳以降の夫婦の年金 | 月21万円 |
| 運用益 | 0円 |
| 退職後の収入 | 月0円・5万円・10万円 |
ここでいう収入は、税金や社会保険料、
仕事に必要な経費を差し引き、
生活費に使える「手取り相当額」とします。
また、退職金、企業年金、配当金、
自宅の売却代金などは計算に入れません。
月々の労働収入による違いを確認するため、
条件を単純化しています。
総務省統計局の「家計調査」によると、
2025年の二人以上世帯の消費支出は、
1世帯当たり月31万4,001円でした。
今回の月35万円は、この平均より約3万6,000円多い金額です。
住宅ローン、マンションの管理費、固定資産税、教育費、
車、親の介護などを考え、退職直後から生活費が
大きく下がらない前提にしています。
収入0円なら65歳になる直前に資産が尽きる
収入がまったくない場合、
年間の取り崩し額は生活費と同じ420万円です。
5,000万円÷420万円=約11.9年
単純計算では、53歳から約11年11か月後、
65歳になる直前に資産を使い切ります。
53歳から65歳までの12年間に必要な生活費は、
420万円×12年=5,040万円
です。
5,000万円あっても、
年金開始までの生活費だけで40万円不足します。
さらに医療費、住宅修繕、家電や車の買い替えなどが
発生すれば、不足額は大きくなります。
「5,000万円あれば十分」と感じるかもしれませんが、
53歳から月35万円で完全リタイアする場合、
決して大きな余裕があるわけではありません。
月5万円働くと65歳時点で680万円残る
次に、53歳から65歳まで月5万円の収入を得る場合です。
年間収入は、
5万円×12か月=60万円
となります。
年間生活費420万円から60万円を差し引くと、
資産から取り崩す金額は年間360万円です。
360万円×12年=4,320万円
53歳時点で5,000万円あれば、
65歳時点の残高は680万円になります。
月5万円でも、12年間では、
5万円×12か月×12年=720万円
です。
月単位で見ると小さく感じますが、
年金開始まで続ければ700万円を超えます。
毎月の固定費を5万円下げることにも近い効果があります。
週に数日働く、
これまでの経験を生かして小さな仕事を受ける、
ブログやKindleなど複数の収入源を育てる。
方法は一つでなくてもよいと思います。
月10万円なら65歳時点で1,400万円残る
月10万円の収入がある場合、
年間収入は120万円です。
資産からの年間取り崩し額は、
420万円-120万円=300万円
となります。
53歳から65歳までの12年間では、
300万円×12年=3,600万円
を取り崩すため、65歳時点で1,400万円が残ります。
月10万円の収入は、12年間で合計1,440万円です。
会社員時代の給料と比べると少ないかもしれません。
しかし、退職後の資産を守るという点では、
1,440万円分の追加資産を持っているのと近い効果があります。
| 退職後の月収 | 年間取り崩し額 | 65歳までの取り崩し総額 | 65歳時点の残高 |
| 0円 | 420万円 | 5,040万円 | 65歳直前に枯渇 |
| 5万円 | 360万円 | 4,320万円 | 680万円 |
| 10万円 | 300万円 | 3,600万円 | 1,400万円 |
65歳以降の資産寿命は何年違うのか
現在の私たち夫婦の年金見込み額は、月約21万円です。
生活費が月35万円なら、65歳以降も毎月14万円、
年間168万円が不足します。
65歳時点の資産を年間168万円ずつ取り崩すと、
月5万円働いた場合の680万円は、
680万円÷168万円=約4.0年
となり、資産寿命は69歳ごろまでです。
月10万円働いた場合の1,400万円は、
1,400万円÷168万円=約8.3年
となり、73歳4か月ごろまで残る計算です。
| 53~65歳の月収 | 65歳時点の資産 | 資産が続く年齢 | 収入0円との差 |
| 0円 | 65歳直前に枯渇 | 約64歳11か月 | ― |
| 5万円 | 680万円 | 約69歳 | 約4年1か月 |
| 10万円 | 1,400万円 | 約73歳4か月 | 約8年5か月 |

つまり今回の条件では、
53歳から65歳まで月10万円の収入を得ると、
収入0円の場合より資産寿命が約8年4〜5か月延びます。
月10万円を12年間得れば合計1,440万円なのに、
資産寿命が12年ではなく約8年延びるのは、65歳以降も
年金だけでは年間168万円不足するからです。
なお、日本年金機構によると、
2026年度の標準的なモデル世帯の年金額は、
夫婦2人分の老齢基礎年金を含めて月23万7,279円です。
このモデル年金を受け取れる場合、
月35万円の生活費との差額は年間約135万円です。
その条件なら、月5万円のケースは約70歳、
月10万円のケースは約75歳4か月まで資産が残ります。
実際の年金額は加入期間や収入、家族構成で異なるため、
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の見込み額を
確認することが大切です。
月10万円を前提にしすぎない
今回の結果を見ると、
「月10万円働けば大丈夫」と考えたくなります。
ただし、53歳から65歳まで毎月安定して
10万円を得られる保証はありません。
体調や家族の介護によって働けない時期があるかもしれません。
ブログやKindleなどの収益も、毎月同じ金額になるとは限りません。
また、額面で月10万円を稼いでも、税金、社会保険料、交通費、
通信費などを差し引くと、生活費に回せる金額は少なくなります。
そのため、私自身は「月10万円を稼げること」を
退職の絶対条件にはしたくありません。
まず収入0円でも一定期間暮らせる計画を作り、
月5万円や10万円の収入は、資産を長持ちさせる
ための余裕として考えます。
金融庁の「ライフプランシミュレーター」も、
試算結果は将来を予測・保証するものではなく、
あくまで目安として利用するよう説明しています。
完全に働かないことだけが退職ではない
53歳で会社を辞めた後に月10万円働くことは、
会社員生活をそのまま続けることとは違います。
働く時間、場所、仕事の内容を自分で選びやすくなれば、
収入が会社員時代より少なくても、自由な時間は増やせます。
今回の単純試算では、月5万円の収入で
資産寿命は約4年、月10万円なら約8年4か月延びました。
大切なのは、
いきなり月10万円を安定して稼ぐことではありません。
月1万円、3万円、5万円と小さな収入源を育て、
同時に生活費も見直す。
その積み重ねによって、53歳退職後の選択肢は
少しずつ増えていきます。
「会社を辞めたら収入はゼロ」と決めつけず、
「生活の一部を自分で稼ぎ、残りを年金や資産で補う」と
考えること。
私自身も、完全リタイアか会社員継続かの二択ではなく、
お金と時間のバランスを取りながら、自分に合った
働き方を準備していきたいと思います。
※本文は制度や資産計画を考えるための単純試算です。
税金、社会保険料、物価上昇、運用損益、退職金、
企業年金、臨時支出などは含んでいません。
合わせて読んでいただければうれしいです






