「会社を辞めれば、税金や社会保険料も安くなる」
以前の私は、何となくそう思っていました。
給与がなくなれば所得税は大きく減ります。
ところが、住民税や国民健康保険料は、
基本的に前年の所得をもとに計算されます。
現在48歳の私は、2030年4月30日、
53歳前後での退職を目標にしています。
現在の年収は約1,000万円。
2027年以降は年収950万円前後で
推移すると想定しています。
仮に予定どおり2030年4月末に退職すると、
5月以降の給与収入はなくなります。
それでも、退職後には住民税、健康保険料、
国民年金保険料などの支払いが続きます。
今回は、2026年度の制度を使って、
2030年4月に退職した場合の税金と
社会保険料を概算してみます。
なお、実際に退職する2030年までに、
税率、保険料率、控除額などが変更される
可能性があります。
今回の数字は将来の負担額を確定するもの
ではなく、退職前に準備しておきたい現金を
考えるための目安です。
今回のシミュレーションの前提
まず、計算の前提を整理します。
| 項目 | 想定 |
|---|---|
| 現在の年齢 | 48歳 |
| 退職予定日 | 2030年4月30日 |
| 退職時の年齢 | 53歳前後 |
| 退職前年の給与収入 | 約950万円 |
| 退職年1〜4月の給与収入 | 約320万円 |
| 退職後の給与収入 | なし |
| 退職後の生活費 | 月35万円 |
| 退職金 | 約1,000万円 |
| 居住地 | 福岡市 |
| 健康保険 | 任意継続と国民健康保険を比較 |
| 国民年金 | 60歳まで納付する前提 |
2030年の給与収入は、年収950万円を単純に12カ月で割り、
4カ月分を約317万円として、切りのよい約320万円で計算します。
実際には賞与、残業代、退職日までの社会保険料などに
よって変わります。

最も注意したいのは退職した年の住民税
福岡市によると、個人市県民税は、
前年1年間の所得に対して課税されます。
つまり、2030年6月以降に支払う住民税は、
退職後の収入ではなく、会社員として働いていた
2029年の所得をもとに計算されます。
2029年の給与収入を950万円と仮定すると、
給与所得控除後の給与所得は、現行制度では
約755万円です。
ここから社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除、
生命保険料控除などを差し引いて、課税所得を計算します。
今回は社会保険料を年間約130万円、
住民税の基礎控除を43万円と仮定し、
それ以外の控除を入れずに単純計算します。
755万円-130万円-43万円=582万円
住民税の所得割をおおむね10%として計算すると、
582万円×10%=約58万2,000円
となります。
これに均等割などが加わるため、
2030年度の住民税は、
年間約59万円が一つの目安になります。
実際には配偶者控除、生命保険料控除、ふるさと納税、
住宅ローン控除などによって変わりますが、
退職直後でも年間50万〜60万円程度の住民税が残る
可能性があります。
会社員の間は給与から毎月差し引かれているため、
住民税を自分で支払っている感覚が薄くなりがちです。
しかし、4月末に退職すると、6月以降は納付書や口座振替に
よる普通徴収に切り替わる可能性があります。
給与がなくなった後に、前年所得を基準とした住民税を支払う。
私が退職資金を考えるうえで、ここは見落とせない部分です。
退職翌年の住民税は約13万円まで下がる想定
2031年度の住民税は、
退職した2030年の所得をもとに計算されます。
2030年の給与収入を約320万円とすると、現行の
給与所得控除を使った給与所得は約216万円です。
さらに、2030年中に支払った社会保険料を仮に45万円、
住民税の基礎控除を43万円とします。
216万円-45万円-43万円=128万円
128万円×10%=約12万8,000円
均等割などを含めると、2031年度の住民税は
約13万〜14万円が目安になります。
この試算では、退職した年の約59万円から、
翌年は約13万円まで下がります。
ただし、2030年に副業収入、不動産所得、株式の
譲渡益などがあれば、住民税が増える場合があります。
私もブログ、note、Kindleなどの副業を続ける予定です。
収入が増えることはうれしい一方で、
所得が増えれば翌年の税金にも影響します。
副業の売上だけでなく、必要経費を差し引いた「所得」で
管理することが大切だと考えています。
国民健康保険は前年所得の影響を受ける
退職後の健康保険には、主に次の3つの選択肢があります。
- 現在の健康保険を任意継続する
- 福岡市の国民健康保険に加入する
- 家族の健康保険の被扶養者になる
ただし、被扶養者になれるかどうかは、退職後の
収入や配当収入などの条件によって決まります。
私の場合、
退職後も配当金や副業収入を得る計画なので、
被扶養者になれるとは限りません。
そのため、任意継続と国民健康保険の比較が
中心になります。
福岡市の国民健康保険料は、医療分、後期高齢者支援金分、
介護分などで構成され、所得割、均等割、平等割を
合計して計算されます。
40歳から64歳までは、介護分も加わります。
2026年度の福岡市の料率を使い、
53歳の本人1人が加入すると仮定した簡易計算では、
退職前年の給与収入が950万円の場合、
国民健康保険料は年間約90万円になる可能性があります。
これは、給与収入950万円から給与所得控除を
差し引いた約755万円をもとに、国民健康保険料の
算定基礎額を求めた概算です。
実際には加入する家族の人数、前年所得、各年度の
料率、賦課限度額によって変わります。
妻や娘も一緒に国民健康保険へ加入する場合は、
均等割などが加算される可能性があります。
一方、現在加入している健康保険を任意継続する場合、
保険料は会社員時代のように会社と折半されません。
退職後は原則として全額を自分で負担します。
それでも、任意継続には標準報酬月額の上限が設け
られている場合があり、家族を被扶養者として加入
させても、通常は人数に応じた追加保険料がかかりません。
そのため、前年所得が高く家族がいる人は、国民健康
保険より任意継続のほうが安くなることがあります。
私の場合も、退職前に現在の健康保険組合へ任意継続の
月額を確認し、福岡市から国民健康保険料の試算を
取り寄せて比較する予定です。
なお、協会けんぽでは、任意継続の申請は退職日の
翌日から20日以内とされています。
現在加入している健康保険組合についても、
期限と条件を事前に確認する必要があります。

退職翌年は国民健康保険料も下がる可能性がある
国民健康保険料も、
基本的には前年所得をもとに計算されます。
2030年の給与収入が約320万円まで下がれば、
2031年度の国民健康保険料も下がる可能性があります。
2026年度の福岡市の料率を使い、本人1人、53歳、
給与収入320万円として簡易計算すると、
年間約28万円が一つの目安になります。
したがって、国民健康保険を選んだ場合のイメージは、
- 退職した年:前年の給与収入950万円が反映され、
年間換算約90万円 - 退職翌年:退職年の給与収入320万円が反映され、
年間約28万円
となります。
ただし、国民健康保険料の年度は4月から翌年3月であり、
所得の反映時期も住民税と完全に同じではありません。
退職日、加入月、家族の加入状況によって実際の支払額は
変わるため、この金額はあくまで概算です。
国民健康保険料については、退職前の段階で居住地の区役所の
保険年金担当窓口に確認するのが確実です。
国民年金は年間約21万5,000円
日本年金機構によると、2026年度の国民年金保険料は
月額1万7,920円です。
1年間では、
1万7,920円×12カ月=21万5,040円
となります。
私は53歳で退職する計画なので、
原則60歳まで国民年金保険料を支払います。
2026年度の保険料を単純に7年間支払うと、
21万5,040円×7年=約150万5,000円
です。
実際の保険料は毎年度改定されますが、退職後の固定費
として年間20万円を超える支出が続くと考えておく必要
があります。
会社員の間は厚生年金保険料が給与から差し引かれ、
会社も半分を負担しています。
退職後は国民年金を自分で納付するため、
健康保険と合わせて「自分で払っている」という
感覚が強くなると思います。
日本年金機構には前納による割引制度もあります。
退職後の資金に余裕があれば、1年前納や2年前納も
検討したいと考えています。
退職金1,000万円の税金はどうなるか
私の退職金は、約1,000万円を見込んでいます。
国税庁によると、勤続年数が20年を超える場合の
退職所得控除は、次の式で計算されます。
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
私は2006年4月に入社し、2030年4月末に退職
すると、勤続年数は税務上おおむね25年として
扱われる可能性があります。
25年として計算すると、
800万円+70万円×5年=1,150万円
となります。
退職金が約1,000万円であれば、退職所得控除1,150万円の
範囲内に収まるため、現行制度では退職金にかかる所得税と
住民税は基本的にゼロになる見込みです。
ただし、勤続年数の数え方、過去の退職金受給歴、
企業年金や確定拠出年金の受け取り時期によって、
退職所得控除の扱いが変わることがあります。
私は60歳で企業年金を一括受給する予定もあるため、
退職金と企業年金の受け取り間隔については、
退職前に税理士や勤務先へ確認したいと思っています。
所得税は確定申告で戻る可能性がある
所得税は、その年の所得に対して計算されます。
2030年4月末に退職し、その年に再就職しなければ、
勤務先で年末調整を受けられない可能性があります。
給与から天引きされた所得税が、本来の年間税額より
多ければ、翌年の確定申告によって還付を受けられる
場合があります。
また、退職後に自分で支払った国民健康保険料、
任意継続保険料、国民年金保険料は、社会保険料
控除の対象です。
医療費控除、生命保険料控除、寄附金控除なども含め、
退職した翌年は確定申告をする前提で資料を保管して
おきたいと思います。
退職後に確保したい税金・社会保険料はいくらか
ここまでの概算をまとめます。
2030年・退職した年に備える金額
| 項目 | 概算 |
| 住民税 | 約59万円 |
| 健康保険料 | 約60万〜90万円程度 |
| 国民年金保険料 | 約14万円※5〜12月の8カ月分 |
| 合計 | 約133万〜163万円 |
健康保険料は、任意継続を選ぶか国民健康保険を選ぶかに
よって大きく変わるため、幅を持たせています。
2031年・退職翌年の概算
| 項目 | 概算 |
| 住民税 | 約13万〜14万円 |
| 国民健康保険料 | 約28万円 |
| 国民年金保険料 | 約21万5,000円 |
| 合計 | 約63万〜64万円 |
任意継続を選んだ場合、
健康保険料はこの国民健康保険料とは異なります。
また、配当金、副業所得、家族の所得などによっても変わります。

私は生活費とは別に200万円を確保したい
今回計算してみて、退職翌年よりも、
退職した年の負担に注意が必要だと分かりました。
退職直後は給与収入がなくなる一方、住民税と
健康保険料には会社員時代の年収が反映されます。
私の退職後の生活費は月35万円、
年間420万円で考えています。
しかし、
この420万円の中に税金と社会保険料が十分含まれて
いなければ、実際の支出は想定を上回ります。
そのため、私は退職初年度について、通常の生活費とは
別に、税金・社会保険料用として200万円程度を現金で
確保したいと考えています。
概算では133万〜163万円ですが、2030年までの
制度変更、健康保険料の差、想定外の所得などを考え、
少し余裕を持たせます。
総資産がいくらあるかだけでなく、
退職後すぐに支払える現金がいくらあるか。
53歳で退職するためには、この視点が欠かせません。
今後は退職予定日の1〜2年前になった段階で、
- 勤務先に退職時の住民税の徴収方法を確認する
- 健康保険組合に任意継続の保険料を確認する
- 居住地の市町村に国民健康保険料の試算を依頼する
- ねんきんネットで年金記録を確認する
- 退職金と企業年金の受け取り方を確認する
という順番で、実際の数字に置き換える予定です。
会社を辞めれば、すぐにすべての負担が軽く
なるわけではありません。
だからこそ、税金や社会保険料を理由に退職を
諦めるのではなく、いくら必要なのかを先に数字で
確認し、その分の現金を準備しておきたいと思います。
53歳で退職するかどうかを最終的に決めるのは、
まだ先です。
それでも、退職した後に慌てないように、
今から「退職翌年」だけでなく、「退職した年」の
支払いまで含めて準備していきます。
参考にした公的資料
- 福岡市「個人市民税(住民税)」
- 協会けんぽ「会社を退職するとき(任意継続)」
- 協会けんぽ「令和8年度保険料額表」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「国民年金保険料の前納」
- 国税庁「退職金と税」
- 国税庁「中途退職で年末調整を受けていないとき」
※本記事は2026年度の制度をもとにした個人的な試算です。
実際の税額・保険料は、退職時点の制度、所得、家族構成、
加入する健康保険などによって異なります。




